先日、歴女の娘と一緒にライデンの「Siebold Huis」(シーボルトハウス)に行き、シーボルトが鎖国中の日本からオランダに持ち帰ったコレクションを見てきました。
シーボルトハウスの売店には、充実した日本関係の書籍コーナーもあるのですが、そこでこの本を購入したんです。

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ウールフ、黒い湖
https://www.amazon.co.jp/dp/4861826683/

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ラッキーなことに、翻訳者の國森由美子さんのサイン本でもありました。

「ウールフ、黒い湖」は、原書が1948年に発売されたオランダのベストセラー。
著者であるヘラ・S・ハーセ(Hella S. Haasse/1918年-2011年)は「オランダ文学界のグランド・オールド・レディー」とも称される存在ですが、日本語への翻訳は今作が初なのだとか。
物語の舞台は1940年代のオランダ領東インド(現在のインドネシア)。農園の支配人を務める植民者の息子である主人公と、現地人の少年「ウールフ」の友情と別離、そしてインドネシア独立への機運を丹念に描き出しています。

予備知識が全くない状態での読書となりましたが、この本の三分の一ほどは翻訳者である國森由美子さんが書かれたハーセに関する詳細な解説に割かれています。
私は解説から読みましたので、予備知識のほとんどない舞台背景の物語でもすんなりと状況などを理解することができました。

そしてその解説のおかげで、ハーセはいわゆる「サードカルチャーキッズ」だということが分かりました。
サードカルチャーキッズとは、ルーツとなる両親の文化(第一文化)と、居住国の文化(第二文化)を基に、主に移民社会や駐在員社会という独特の文化(第三文化)で成長する(成長した)子供または成人を指します。
こういった特殊な多文化の中で育った人々は、何処の国にも属さない独特なアイデンティティを形成します。それは時として彼らを、「自分を理解できる人は何処にもいない」という寄る辺ない孤独感で苛むのだそう。
グローバル社会の中で近年取りざたされるようになったこの「サードカルチャーキッズ」問題を、ハーセはいち早く1948年に、この「ウールフ、黒い湖」で文学に昇華させていたのです。
作者を投影した主人公「ぼく」のみならず、彼の対の存在であるウールフも、特殊な環境で育ったサードカルチャーキッズと言えるかもしれません。

「自分が育った国のことを、自分は本当に分かっているのか。その表面しか見ていないのではないか」
この本が投げかけるテーマは、ますます国際化が広がる現在にこそ必要な問いです。
これからのグローバル社会を生きていく若い世代には、ぜひ読んで欲しい作品だと思います。

また、主人公の母親に関するエピソードも、自分の意思からではなく家族の帯同で外国に住むことになった駐在夫人には時として起こることを描いています。
小さなエピソードですが、こちらも印象に残りました。

==========お知らせ==========

電子書籍出版しました!
(紙版)「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間

レギュラーで書いている主な執筆媒体のご紹介です。
ぜひ読んでみてください♪

「現代ビジネス」(不定期掲載)
http://gendai.ismedia.jp/list/author/naokokurata

「Glolea!」(プロフィール&執筆記事一覧)
http://www.glolea.com/ambassador/kurata-naoko/profile

「未来住まい方会議」(執筆記事一覧)
http://yadokari.net/author/kurata/ 

「TABIZINE~人生に旅心を~」(執筆記事一覧)
http://tabizine.jp/author/kuratanaoko/

「ima(今) 海外リポーターが伝える世界の生活情報サイト」 (執筆記事一覧)
http://ima-earth.com/contents/profile.php?userid=kurata

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